SESのヤバい会社の見分け方|求人と面接で聞く質問リスト(還元率の中身・待機中の給与・固定残業代・偽装請負のサイン・面談・スキルシート)

桜色の長髪のIT職女性が、華やかな求人の食品サンプルと、還元率や待機中の給与を表す計算トレーを見比べるアニメイラスト。

こんにちは、おうどんです🍜

おうどん「待機になったら、お給料はどうなりますか」

面接官「うちは待機なんてほとんど出ないから、大丈夫ですよ」

おうどん「ほとんど、ということは、出たときは……」

面接官「やる気次第ですね!」

(会話は説明用の架空の場面です)

うどん屋の店先には、食品サンプルが並んでいます。
えび天は丼からはみ出し、だしは透きとおり、ねぎは青々としている。
求人票も、だいたいこれです。

読者「で、実物は?」

それは入ってみないとわからない。
……と言いたいところですが、入る前に厨房をのぞく方法はあります。それが、面接での質問です。

今日の結論を先に書いておきます。

  • 還元率は、数字ではなく「何を何で割ったか」を聞く
  • 待機中の給与は、「何の何%か」と「どこに書いてあるか」をセットで聞く
  • 固定残業代(みなし残業)は、基本給の額・時間数・超えた分の扱いの3つがそろっているかを見る
  • 答えの中身より、聞いたときの答え方のほうが、会社のことを教えてくれる

(この記事の会社の見分け方や業界の傾向は、IT業界20年のおうどんの考えです。法律の話は、条文と厚生労働省の資料を確かめた範囲だけ書きます。法律相談ではないので、実際に困っている人は労働基準監督署や弁護士などに相談してください)

目次

入社前に本当のことがわからないのは、なぜか

求人票は食品サンプル。きれいに作ってあるのは、悪いことではありません。
問題は、サンプルしか見せてくれない店があることです。

おうどんも、入社前に給料・休み・残業代のことを聞いて、はぐらかされたことがあります。
実際のデータを見せてほしいとお願いしても、見せてもらえませんでした。

おうどん「去年、待機になった人は何人くらいいますか」

面接官「数字は手元にないんですけど、みんな元気にやってますよ」

元気かどうかは聞いていない。

SES(エンジニアの技術・作業を客先に提供する働き方の通称)の会社は、仕事の中身が「どの客先に入るか」で決まります。
つまり、入社のときに約束できることが、そもそも少ない。
だからこそ、約束できることを、はっきり約束してくれる会社かどうかが大事になります。

読者「約束できないことが多いなら、聞いても無駄じゃないですか」

おうどん「無駄じゃない。約束できないことを、約束できないと正直に言える会社かどうかがわかる」

サンプルのえび天が大きいのは許す。サンプルしかない店は許さない。
この記事は、その見分け方の話です。

還元率は、数字より「何÷何か」を聞く

SES の求人でよく見る「還元率○%」。
これは割り算の答えなので、分母(何で割ったか)と分子(何を足したか)が変わると、同じ給料でも数字が変わります。

おうどんが見てきた範囲では、会社によって計算の中身が違います。
なので、数字そのものより、中身を聞くのが先です。

読者「還元率80%の会社と70%の会社なら、80%のほうがいいですよね」

おうどん「80%のほうが、だしの量が多く見えるお椀を使っているだけかもしれない」

お椀が小さいと、同じだしでも、なみなみに見えるんですよね。

聞くこと

聞くことなぜ聞くか
分母は何か(客先からの単価そのものか、手数料を引いたあとか)分母が小さいほど、還元率は大きく見える
分子に何が入っているか(基本給・残業代・賞与・交通費・会社が払う社会保険料など)会社が払う社会保険料や交通費を分子に入れると、本人の手元に来るお金が同じでも還元率は上がる
待機中の給与は、計算に入っているか待機が多い年は、実際の還元が下がることがある
自分の単価を、本人に教えてくれるか単価がわからないと、還元率が本当かどうか確かめようがない
単価が上がったとき、給料はいつ・どう変わるか還元率が高くても、給料に反映されるまでが遅いことがある

聞き方の例です。

「還元率の計算に、会社が負担する社会保険料や交通費は含まれていますか。単価から計算した、年間の支給額の例を見せてもらえますか」

数字の例を出してもらえれば、こちらで割り算をし直せます。

読者「例を出せないと言われたら?」

おうどん「割り算の答えだけ書いて、式を見せない算数のテストは、0点です」

ちなみに、おうどんの最初の会社では、単価は月65万円で、手取りは月30万円に届かないくらいでした。
手取りは税金や社会保険料を引いたあとの額なので、この2つを割っても還元率にはなりません。
当時のおうどんは、そもそも還元率という言葉を知りませんでした。知らないまま、サンプルのえび天を眺めていたわけです。

待機中の給与は「何の何%か」まで聞く

案件が決まらず、仕事がない期間を待機と呼びます。
SES では、自分の意思と関係なく待機になることがあります。そして、ここで給料がどうなるかは、会社によってかなり違います。

おうどんは、待機を経験しています。
最初の会社では、待機中の給料は出ませんでした。別の会社では、基本給の60%でした。
好きで待機しているわけではないので、おうどんとしては全額出してほしいと思っています。

面接官「待機中も、ちゃんと60%出しますから」

おうどん「何の60%ですか」

面接官「……給料の?」

ここ、大事なんです。

法律では「平均賃金の100分の60以上」

労働基準法26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、休業期間中、平均賃金の100分の60以上の手当(休業手当)を支払わなければならない、と定めています。

ポイントは2つです。

  • 60%は「以上」。上限ではなく、最低ライン
  • 基準は「基本給」ではなく「平均賃金」

労働基準法12条では、平均賃金は、原則として、算定すべき事由の発生した日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った、1日あたりの金額とされています。賃金締切日がある場合は、直前の締切日を基準に3か月を取ります。
臨時に支払われた賃金や、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)は、総額に入れません。

平均賃金は日額、ここでいう基本給は月額なので、そのまま金額を比べることはできません。休業手当は、休業させた所定労働日ごとに、平均賃金の60%以上を計算します。日給・時給制などには平均賃金の最低保障もあるため、実際の計算では賃金の決め方も確認してください。

読者「つまり、基本給の60%と、平均賃金の60%は、別物?」

おうどん「別物。かけうどんの6割と、かけうどん+天ぷらの3か月分を均した6割くらい違う」

読者「たとえが長い」

基本給の60%と平均賃金の60%のどちらが多いかは、手当や残業代の付き方などで変わるので、一概には言えません。
だからこそ、「何の何%か」を聞く必要があるわけです。

なお、SES の待機が、26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるかどうかは、個別の事情で判断されます。この記事では、当たる・当たらないを決めつけません。

聞くこと

  • 待機中の支給は、何を基準に何%か(基本給か、平均賃金か、月給の総額か)
  • それは就業規則や賃金規程のどこに書いてあるか(見せてもらえるか)
  • 待機中、固定残業代や手当はどうなるか
  • 直近1年で、待機になった人は何人くらいいて、平均でどのくらいの期間だったか
  • 待機中に、研修や社内作業などの仕事があるか

読者「これ全部聞いたら、面接官に嫌われませんか」

おうどん「嫌う会社なら、入る前に嫌われておいたほうが安い」

入ってから嫌われるほうが、ずっと高くつきます。

固定残業代(みなし残業)は、3点セットで見る

固定残業代は、決まった時間分の残業代を、残業してもしなくても毎月定額で払う仕組みです。みなし残業と呼ばれることもあります。
厚生労働省のリーフレットも、使う場合の表示のしかたを求める書き方なので、仕組みを使うこと自体が禁止されているわけではありません。

ただ、おうどんは、みなし残業がある会社はヤバいと思っています(おうどんの考え)。
理由は、おうどんの見てきた範囲では、みなし残業の会社は基本給がとても安いことが多かったからです。

表示に必要な3つ

厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークの固定残業代のリーフレットは、若者雇用促進法に基づく指針をもとに、固定残業代制を採用する場合は、募集要項や求人票などに次の①〜③をすべて明示するよう求めています。

  1. 固定残業代を除いた基本給の額
  2. 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
  3. 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨

読者「求人に『月給25万円(固定残業代含む)』としか書いてなかったら?」

おうどん「サンプルの丼に、えび天が何本入っているか書いていない状態」

そういう求人を見たら、面接で①〜③を聞けば済みます。

待機と組み合わさると、何が起きるか

おうどんの実感では、基本給が安い会社で、待機中は基本給の何割かしか出ないと、給料がないのと同じになります。
説明用の架空の数字で見てみます。

項目普段の月待機中(基本給の60%の会社の場合)
基本給18万円10.8万円
固定残業代7万円会社による(出ないなら0円)
合計25万円固定残業代が出なければ10.8万円

(待機中の固定残業代の扱いは会社ごとに違います)

これは支給額が減る仕組みを示す例で、この金額で法的に足りるという意味ではありません。26条の休業に当たる場合は、会社の規程だけでなく、平均賃金から計算した休業手当の最低額を満たすかも確認が必要です。

求人票では月給25万円。
待機になって、固定残業代が出なければ、基本給の60%は10.8万円。普段の月給の4割強です。

読者「サンプルのえび天、実はほとんど衣だった……」

衣だけ揚げても、天ぷらとは呼べません。

なので、ここはセットで聞きます。

「固定残業代を除いた基本給はいくらですか。待機になったとき、支給の基準になるのは基本給ですか。そのとき固定残業代は出ますか」

🔰 ここまで読めば今日から困らない

  • 還元率は、数字ではなく「分母と分子に何が入っているか」と、年間の支給額の例を聞く
  • 待機中の給与は、「何の何%か」と「就業規則のどこに書いてあるか」を聞く。法律の休業手当は平均賃金の60%以上で、基本給の60%とは別物
  • 固定残業代は、基本給の額・時間数と金額・超えた分の追加払いの3つがそろっているかを見る。待機中の扱いもセットで聞く

ここから先は中級者向け:契約形態と偽装請負のサインを面接で聞く

ここから先は中級者向け。読み飛ばしてもOKです。

SES は、客先と自社のあいだの契約が準委任(作業そのものを任される契約)になっていることが多いです(おうどんの実感)。
この場合、現場で作業の指示を出すのは、本来は自社の側です。
ここからの客先の指揮命令に関する説明は、客先との契約が準委任・請負の場合の話です。派遣契約では、派遣先が指揮命令を行います。まず契約形態を確かめたうえで、答えを見てください。

厚生労働省の37号告示(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)は、業務の遂行方法の指示や評価、始業・終業や残業の指示、配置の決定・変更などを、受注した側が自ら行うことを条件にしています。
そして、疑義応答集(第3集)の Q1 では、準委任でも、実態として発注者と受注者側の労働者のあいだに指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に当たる、とされています。

ここまでの詳しい話は、多重下請けの記事に書きました。今日は、面接で何を聞くかに絞ります。

読者「面接で『御社は偽装請負ですか』って聞けばいいですか」

おうどん「それで『はい』と答える会社は、ある意味いちばん正直」

もちろん、そうは聞きません。現場の動き方を聞きます。

聞くこと(37号告示の項目を、面接の質問にしたもの)

37号告示の項目(要約)面接で聞くこと
業務の遂行方法の指示・管理を自ら行う現場で作業の指示を出すのは誰ですか。自社の管理責任者はどなたで、どのくらいの頻度で現場に来ますか
業務の評価を自ら行う私の評価は、誰が何をもとに決めますか
始業・終業・休憩・休日などの管理を自ら行う(単なる把握は除く)勤怠の承認や、残業の指示は誰がしますか
配置の決定・変更を自ら行うどの現場に入るか、現場を外れるかは、誰が決めますか

面接官「現場ではお客様の指示に従ってください。うちの者は、たまに様子を見に行きます」

準委任・請負の現場についてこう答えられたら、おうどんなら、帰り道に少し考え込みます。
ただ、言い方ひとつで違法かどうかが決まるわけではありません。実態は現場ごとに判断されます。
答えを聞いたら、「管理責任者の方の名前と連絡先は、入社時に教えてもらえますか」と一歩だけ踏み込んでみてください。

読者「そこで名前が出てこなかったら?」

おうどん「名札だけの管理責任者の可能性がある。名札は現場に来ない」

なお、おうどんの最初の会社では、自社からはひとりで現場に入っていて、営業が定期的に来ることもありませんでした。
入る前にこの質問を知っていたら、と今でも思います。

面談をどう見るか:誰が出てきて、誰が「見送り」を伝えるか

SES では、現場に入る前に客先との「面談」があります。
おうどんが見てきた範囲では、名目は面談でも、実際はほとんど面接で、そこで参画が決まります。おうどんが新人だったころから、今も変わっていません。

疑義応答集(第3集)の Q7 では、発注者が特定の者を指名したり、特定の者の就業を拒否したりすると、適正な請負等とは認められない、とされています。
面談の名前で人を選ぶことへのおうどんの批判は、多重下請けの記事にたっぷり書いたので、ここではくり返しません。
今日は、会社選びで面談をどう見るかです。

読者「面談があること自体で、ヤバい会社かどうかわかりますか」

おうどん「それで決めると、業界のほぼ全部の店が閉店になる」

おうどんの意見としては、それ自体が業界の問題です。でも会社選びでは、その面談を会社がどう扱っているかを見ます。

聞くこと

  • 客先との面談には、誰が出てきますか(客先の人・元請の人・自社の営業)
  • 自社の営業は、面談に同席しますか
  • 面談で聞かれた経歴やスキルについて、事前に本人とすり合わせますか
  • 面談で見送りになったとき、その理由は誰が、どう伝えてくれますか
  • 見送りが続いたとき、待機の扱いと給料はどうなりますか

最後の2つは、待機の章とつながっています。
面談で落ちるのは、本人の力だけで決まることではありません。それなのに、落ちた結果の待機を本人がかぶる会社かどうか。ここが見どころです。

面接官「見送りの理由は、だいたい先方が教えてくれないので」

おうどん「じゃあ、次の面談に向けて、何を直せばいいんですか」

面接官「……気持ち、ですかね」

精神論が出たら、おうどんはメモを取ります。

スキルシートを、誰がどう書くか

スキルシート(経歴やスキルを書いて客先に渡す書類)は、本人ではなく会社が作ることがあります。
おうどんの最初の会社では、パソコンの電源ボタンもわからない状態だったのに、「Excel の関数・Word・PowerPoint ができる」「VB も少しできる」と書かれていました。おうどんは、そんなことは書いていません。

盛りと詐称の境目は、スキルシートの記事に書きました。会社選びで聞くのは、作り方です。

読者「盛ってくれる会社のほうが、案件が決まりやすくていいのでは」

おうどん「盛られた丼を、面談で運ぶのは本人。こぼしたら本人のやけど」

聞くこと

  • スキルシートは、誰が書きますか(本人・営業・両方)
  • 客先に出す前に、本人が最終版を確認できますか
  • 本人が事実と違うと言ったら、直してもらえますか
  • 経験年数は、どう数えますか(参画期間の切り上げをするか)

「本人が確認できる」と即答してくれる会社なら、少なくとも、知らないうちに盛られる心配は減ります。

面接官「書き方は任せてください。うちの営業、書くのがうまいので」

うまいのが、書くことなのか、盛ることなのか。何をどう任せるのか、もう一段聞いてください。

労働条件通知書で「就業場所・業務の変更の範囲」を確かめる

口で聞いた話は、最後に紙で確かめます。サンプルではなく、注文伝票です。

2024年4月から、労働条件の明示のルールが変わりました。
厚生労働省のリーフレットによると、すべての労働契約の締結時と、有期労働契約の更新時に、雇い入れ直後の就業場所・業務の内容に加えて、それらの「変更の範囲」も明示が必要になりました。
変更の範囲とは、将来の配置転換などによって変わりうる就業場所・業務の範囲のことです。

「変更の範囲」と聞いて、おうどんは一瞬、麺の太さの許容範囲のことかと思いました。違います。

読者「SES って、客先が変わるたびに場所が変わりますよね」

おうどん「そう。だから、この欄がどう書かれているかを、入社前に見ておく価値がある」

どこまで変わりうるのか(地域・客先・業務の種類)を見て、面接で聞いた話と合っているかを確かめてください。
求人のリモート表記と入社後のギャップは、別の記事で深掘りする予定なので、ここでは「リモートの約束も、紙に書けるか聞く」の一言だけにしておきます。

確かめること

  • 内定のあと、入社前に労働条件通知書(または雇用契約書)をもらえるか
  • 就業場所・業務と、その変更の範囲がどう書かれているか
  • 固定残業代の①〜③、待機中の支給の基準が、面接で聞いた話と同じか
  • 書面と話が違ったら、署名する前に聞く

読者「書面をもらえなかったら?」

おうどん「伝票のない注文は、会計のときに値段が変わる」

面接官の態度で見るサイン

ここは、おうどんの体験と考えの章です。法律の話ではありません。

質問の答えと同じくらい、答え方がものを言います。
おうどんが面接で「ヤバい」と感じたのは、こんなときでした。

ヤバいと感じたサインおうどんが感じたこと
威圧的な人が出てくるその場で、おうどんから断った
精神論ばかり語るおうどんは「すべてはお金」派。気合いでは家賃は払えない
質問をはぐらかす(「やる気次第」)答えられないのか、答えたくないのか、どちらにしても困る
社員と話させてくれない見せられない厨房なのかもしれない

面接官「うちは家族みたいな会社だから」

おうどん「家族なら、待機中の給料の基準を教えてくれますか」

逆に、大丈夫だと思えた会社もあります。

大丈夫だと思えたサイン中身
直近の離職のことを答えて、資料まで見せてくれた都合の悪い数字から逃げなかった
回答が丁寧質問の意味を取り違えない
相手も準備をしてきているこちらの経歴を読んだうえで話してくれる
質問にしっかり答える「わかりません」も含めて、はっきり言う
その場でわからないことは、後日すぐ連絡をくれる約束を守るかどうかが、入る前に見える

大丈夫だった会社の共通点は、答えの中身が良かったことより、答え方が誠実だったことでした。
サンプルが多少地味でも、厨房を見せてくれる店のほうが、おいしかったりします。

口コミの読み方

口コミサイトは便利です。ただ、おうどんは、口コミを判決ではなく、面接で聞く質問のネタとして使うのがいいと考えています。

口コミには、書いた人の立場も、時期も、部署も、全部まざっています。
5年前の「残業が多い」と、先月の「残業が多い」は、同じ一文でも重さが違う。客先常駐の会社なら、どの現場にいたかでも話が変わります。
良い口コミばかりが短い期間に並んでいる、という見え方をすることもあります。理由はいろいろ考えられるので、それだけで何かを決めつけることはしません。
星の数を眺めて決めるのは、サンプルのえび天の照り具合で店を選ぶのに似ています。

なので、使い方はこうです。

  • 書かれた時期を見る。古いものは「今はどうですか」と面接で聞く材料にする
  • 具体的に書かれていること(待機中の給与、評価のしかた、営業の動き)を拾って、面接で同じことを聞く
  • 口コミと面接の答えが食い違ったら、その食い違いこそ、もう一度聞く価値がある

たとえば、口コミに「待機中は給料が大きく下がる」とあったら、面接で「待機中の支給の基準は何ですか」と聞けばいい。
口コミの真偽を自分で裁く必要はありません。会社に答えてもらえばいいんです。

裁判官をやるより、記者をやるほうが、ずっと楽で、ずっと確かです。

ここから先は上級者向け:条文と資料の書きぶりを確かめる

ここから先は上級者向け。読み飛ばしてもOKです。
今日使った資料の書きぶりを、もう少し細かく見ておきます。どれも個別の事情で結論が変わるので、断定はしません。

読者「上級者向け、急にお品書きの裏面みたいになりましたね」

おうどん「裏面には、だいたい大事なことが小さい字で書いてある」

休業手当と平均賃金

労働基準法26条の要件は、使用者の責に帰すべき事由による休業であること。
効果は、休業期間中、平均賃金の100分の60以上の手当を支払うこと、です。

平均賃金(12条1項)は、原則として、事由の発生した日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った日額です。賃金締切日がある場合は直前の締切日を基準に計算します(12条2項)。日給・時給制などには最低保障もあります(12条1項ただし書)。
総額から除くもの(12条4項)は、臨時に支払われた賃金、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金、通貨以外で支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの、です。

条文から読み取れるのは、次の2点です。

  • 3か月以内の期間ごとに払われる手当(毎月の残業代や手当など)は、総額に入りうる
  • 割るのは「総日数」なので、1日あたりの金額は、月給を出勤日数で割った額とは違う

基本給の60%という会社の規程が、法律の休業手当と比べて多いか少ないかは、その人の賃金の中身しだいです。
会社の規程と法律の最低ラインは別のものなので、「規程に何と書いてあるか」と「その待機が26条の休業に当たるか」は、分けて考える必要があります。

読者「1日あたりが総日数割りって、ちょっとずるくないですか」

おうどん「ずるいかどうかは別として、知らないと計算で負ける」

固定残業代の表示と、判別できること

固定残業代のリーフレットが引いている指針(青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関する指針の第二の一(一)ハ(ハ))は、固定残業代について、計算方法(固定残業時間と金額を明らかにするもの)、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える分の割増賃金を追加で支払うこと等を明示すること、としています。
名称にかかわらず、一定時間分の時間外労働・休日労働・深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金が対象です。

同じリーフレットの裏面には、最高裁の判決(平成24年3月8日、第一小法廷)の抜粋も載っています。
基本給を月額41万円とし、月間180時間を超えた分だけ別に払う契約で、基本給のうち通常の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できないとして、180時間以内の時間外労働について割増賃金が支払われたとはいえない、とされた事例です。

つまり、固定残業代は、どこまでが基本給で、どこからが残業代かを分けて示せることが大事になります。
求人で①〜③がそろっているかを見るのは、この「分けて示せているか」を入口で確かめる作業でもあります。

読者「天ぷらと衣の重さを、分けて量れないとダメってことですね」

衣ごと量って「えび天100グラム」と言われても、えびが何グラムかはわかりません。

37号告示は「いずれにも該当する場合を除き」

37号告示の第二条は、請負の形式の契約で働かせる事業主でも、次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする、という書き方です。
第一号は、労働力を自ら直接利用すること(イ 業務遂行の指示・評価、ロ 労働時間等の管理、ハ 服務規律と配置の決定・変更)、第二号は、業務を自己の業務として相手方から独立して処理すること(資金、事業主としての責任、単なる肉体的な労働力の提供ではないこと)です。

全部そろってはじめて、請負等の側に入れる。1つ欠けると、派遣の側に倒れうる。
中級者向けの章の質問表が「どれか1つ聞けば済む」ものではないのは、このためです。

さらに疑義応答集(第3集)の Q8 は、Q1〜Q7 の考え方はアジャイル型開発以外のシステム開発を請負業務とする場合にも当てはまる、としています。
Q2・Q5 では、対等な関係で協働し、受注者側の開発担当者が自律的に判断しているなら、密に情報共有や技術的な助言・提案をしていても偽装請負と判断されるものではない、とも書かれています。
面接で「客先の人とよく話しますか」と聞いても、答えは判断材料になりません。聞くべきは、誰が指示を出しているか、です。

就業場所・業務の変更の範囲

労働条件明示のリーフレットでは、この変更は労働基準法施行規則5条の改正によるもので、すべての労働者が対象です。
有期契約の人には、ほかに更新上限の有無と内容などの明示も加わっています。
契約社員として SES の会社に入る場合は、更新上限の欄も一緒に見ておくと安心です。

そのまま使える質問リスト

ここまでの質問を、面接に持っていける形にまとめます。全部聞く必要はありません。気になるところから、2〜3個だけでも。

読者「全部聞いたら、面接が2時間になりませんか」

おうどん「2時間付き合ってくれる会社なら、たぶん大丈夫」

【お金】
□ 還元率の分母は、客先からの単価そのものですか
□ 分子に、会社負担の社会保険料・交通費・賞与は入っていますか
□ 単価から計算した年間の支給額の例を見せてもらえますか
□ 自分の単価は、本人に教えてもらえますか
□ 固定残業代を除いた基本給はいくらですか
□ 固定残業代は何時間分・いくらで、超えた分は追加で払われますか

【待機】
□ 待機中の支給は、何を基準に何%ですか(基本給・平均賃金・月給総額)
□ それは就業規則・賃金規程のどこに書いてありますか
□ 待機中、固定残業代や手当はどうなりますか
□ 直近1年で待機になった人の数と、平均の期間を教えてもらえますか

【現場と契約】
□ 客先との契約は、準委任・請負・派遣のどれが多いですか
□ 現場で作業の指示を出すのは誰ですか
□ 自社の管理責任者はどなたで、どのくらい現場に来ますか
□ 勤怠の承認と残業の指示は、誰がしますか

【面談とスキルシート】
□ 客先との面談には、誰が出てきますか。自社の営業は同席しますか
□ 見送りの理由は、誰がどう伝えてくれますか
□ スキルシートは誰が書き、客先に出す前に本人が確認できますか

【書面】
□ 入社前に、労働条件通知書(雇用契約書)をもらえますか
□ 就業場所・業務の変更の範囲は、どう書かれますか

答えを聞いたら、その場でメモを取ってください。
あとで書面と見比べるときに、「言った・言わない」にならずに済みます。

読者「メモを取ってたら、面接官に警戒されそう」

おうどん「警戒されて困るのは、メモに残ると困る答えをする側だけ」

SES 会社への要求:聞かれる前に書いてほしい

ここは、おうどんの意見の章です。

ここまで、「面接で聞きましょう」と書いてきました。
でも、本当は、求職者が面接で一つずつ聞き出さないといけない状態そのものがおかしい。
食品サンプルしか置いていない店に、客が毎回「厨房を見せてください」と頼む。そんな店が、業界の普通になっています。

なので、SES 会社に要求します(要求の中身はおうどんの意見です)。

何をどうしてほしいか
還元率数字だけでなく、計算式(分母と分子に何を入れたか)と、年間支給額の例を求人に書く
待機中の給与何を基準に何%かを、求人の段階で書く
固定残業代①〜③を、求人票に必ずそろえて書く(指針でも求められている)
単価と契約形態本人の単価と、客先との契約形態を、聞かれる前に本人に伝える
面談見送りの理由を本人に返す。面談の結果の待機を、本人だけにかぶせない

読者「そんなに書いたら、求人票が文字だらけになりませんか」

お品書きの字が多い店は、だいたい、聞かれる前に答えたい店です。

読者「書いてくれる会社、ありますか」

おうどん「ある。そして、書いてくれる会社から順に、人が集まるようになってほしい」

書かない会社を選ばないことは、求職者にできる、いちばん静かな抗議です。
そして、書いてくれる会社が増えるほど、面接で厨房をのぞく必要は減っていく。そういう業界になってほしいと、おうどんは思っています。

まとめ:サンプルより、厨房を見せてくれる店へ

冒頭の、「やる気次第ですね!」の面接。
次は、こう話せるといいですよね。

おうどん「待機になったら、お給料はどうなりますか」

面接官「基本給の80%です。賃金規程の第○条に書いてあるので、あとで写しをお送りします。去年待機になったのは3人で、平均1か月でした」

おうどん「ありがとうございます。ちなみに、基本給はいくらですか」

面接官「固定残業代を除いて、○○円です」

数字が良いかどうかの前に、聞いたことに、聞いたとおりに答えてくれる。
それだけで、厨房の中がかなり見えます。

ヤバい会社は、答えの中身より先に、答え方でわかる。

まずは次の面接で、「待機中の支給は、何の何%ですか」と1回だけ聞いてみてください。
はっきり答えてくれたら、今日はえび天を1本おまけしてもいいと思います🍜

参考資料

2026年10月時点の内容です。

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この記事を書いた人

おうどん|癒しと創作をたのしむ雑食クリエイター
写経アプリやクレイセラピー、優しい和風デザインがすき。
ZARDと刀剣と文字に癒されて、今はアプリ作ってます。

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